「拙速」という言葉をご存知でしょうか。「拙速」を使う場面は意外と多いです。ただ、「拙速」はよく耳にする言葉ではありますが、適切な意味を理解していて正しく使えている人は少ないのではないでしょうか。使用するにあたっては、しっかり意味を押さえておきたいですよね。そこで今回は「拙速」の意味や使い方、類語、反対語について解説していきます。「拙速」を用いた四字熟語も紹介します。「拙速」を日常会話でもビジネスシーンにおいても、きちんと使いこなせるようにしましょう!
「拙速」は「せっそく」と読みます。 「拙」は音読みだと「セツ」、訓読みだと「つたない・まずい」と読みます。 「速」は音読みだと「ソク」、訓読みだと「はやい・はやめる・すみやか」と読みます。
「拙速」の意味は「仕上りは下手でも、やり方が早いこと」です。 「拙」は「つたない、まずいこと、劣っている」を意味します。 「速」は「スピードがはやい・はやさ」を意味します。 「拙速」は主にビジネスシーンで使用され、「出来は悪いが仕事が素早い」ことを意味します。 「謝罪をする際は拙速な対応は禁物だ」などとネガティブな意味合いで使われることもあれば、「兵は拙速を尊ぶ」などとポジティブな意味合いで使われることもあります。 しかし政治や経済界で「拙速」と言われた場合、ほとんどの場合は褒め言葉ではなく批判となります。 場面によってニュアンスが変わるので注意しましょう。
「拙速に過ぎる」は「ある事を行うにあたり、まだその時期にはなっていないこと」を表します。 簡単にいえば「まだ早い」「機が熟していない」という意味です。 「拙速に過ぎる」は相手への忠告として使う表現です。 例えば、「あなたは拙速に過ぎる」と言った場合「もっとゆっくりでいいから丁寧に事にあたりなさい」という意味になります。 「拙速に過ぎる」という忠告は、 ①まだ未熟なのに焦って事にあたったため、出来が悪い ②出来はそこまで悪くはないが、もっと時間をかければよりよいものができる の2つのニュアンスで使うことができます。
例文
「拙速な判断」は「十分な熟考なしに決められた早い決断のこと」です。 「拙速な判断」とした場合、「拙速」はネガティブな意味で使われます。 「迅速でよい判断だ」という意味ではなく、「十分に検討されず急いでした不適切な判断だ」という意味です。 「拙速すぎる判断」と表現することもあります。
例文
「拙速を避ける」は「スピードを重視するがあまりクオリティーを下げないようにする」という意味になります。 短期的ではなく長期的な視野で物事を俯瞰しじっくりとやるべきことをやる、という意味合いになります。
例文
「拙速に進める」「拙速に事を運ぶ」は「出来が悪いのは承知の上で、速さに重きを置き仕事を進めること」です。 「拙速に進めたい」「拙速に事を運びたい」などと願望を表して使ったりします。 ポジティブな意味かネガティブな意味かは状況によって変化します。 例えば、熟考を要する仕事を「拙速に進める」ことはモチロンよろしくないですが、 ベンチャー企業などでは完璧さよりスピードを重視し、新しいサービスを少しでも早くリリースしユーザーの反応を確かめたりします。 この場合、「拙速に事を運ぶ」ことはよいことです。
例文
ビジネスでは完全であることよりもなるべく早い段階で相手に伝えることが大事な場面がありますよね。 その場合の、クッション言葉として「拙速ではございますが」=「早く仕上げたので出来はあまりよくないですが」を使います。 プロトタイプや草案など、仕上がり具合よりスピードが求められるものを提出したり納品したりするときに使います。 しかし実際には、ビジネスシーンで本当に出来の悪いものを見せるのはタブーですから、ただ単に謙遜の意味合いで使う場合も多いです。 「拙速ではございますが、少しでも早くお目通しいただく〜」「拙速ではございますが、いち早く○○様にご紹介したく〜」「拙速ではございますが、早速○○いたしましたので〜」などなぜ急いだのか説明を付け加えるとよいでしょう。 「拙速ではございますが」の方が「拙速ではありますが」より丁寧な表現です。
例文
「拙速感」とは文字通り「拙速な感じ」という意味です。 スピード感はあるが出来具合がよろしくない、と批判するときに使います。 「拙速感がある」「拙速感は否めない」「拙速感は拭えない」などと、ネガティブなニュアンスが伴います。
例文
”拙速主義”とは、出来栄えよりも、処理をスピーディーに行うことを重視する考えのことです。 ですので、完璧でなくても及第点であったら良いとする考え方になります。 目まぐるしくテクノロジーや政治環境が変化する現代では、「拙速主義」が求められるのは自然な流れです。 世界的IT企業が集中している米国シリコンバレーなどでは「拙速主義」を掲げる企業を多いです。 ソフトウェアは、時間かけて綿密に設計を立てるというよりも、高速で作り上げバグが出たら後から改善を繰り返す、という考え方がソフトウェアのエンジニアの常識となっています。
例文
「短兵急」の意味は「だしぬけであるさま、きわめて急なさま」です。 「短兵」とは「刀剣や手槍などの短い武器」を意味します。元々「短兵急」とは「短い武器を持っていきなり攻撃すること」を表していましたが、転じて「いきなり行動する」という意味で使われるようになりました。 主に「短兵急な◯◯」「短兵急に◯◯する」という形で用います。 例えば、「短兵急な話だ」「短兵急に処理する」「短兵急に結論を出す」などと使います。
例文
「性急」は「せいきゅう」と読みます。 「性急」の意味は「物事の進みかたが急であること」です。 例えば、「性急に事を進める」ならば「あわただしく物事を進めること」を意味します。 物事を急いで進めたり、先を急ぐことを表します。 「気が短くて、せっかちである」という意味で、「性急な人」「彼女は性急だ」などとも用います。
例文
「急造」は「きゅうぞう」と読みます。 「急造」の意味は「急いで物をつくること」です。 急いで物事を進めることではなく、急いで物を作ることを表します。「急造の◯◯」「急造する」という形で使います。 例えば、「寄宿舎を急造する」「チームを急造する」などと用います。
例文
「早計」は「そうけい」と読みます。 「早計」の意味は「早まった考え、十分に考えないで判断すること」です。 軽はずみな言動や良く考えないで出した考えを表します。 例えば、「今回の対策は早計だ」ならば「今回の対策は十分に考えずに決めた」というニュアンスになります。 「早計」はマイナスな意味合いで使われることがほとんどです。
例文
「時期尚早」は「じきしょうそう」と読みます。 「時期尚早」の意味は「あることを行うにはまだ早すぎること」です。 単に「時期が早過ぎる」ではなく、「〜するのがまだ早いため、今実行しても上手くいかない」といったマイナスな意味合いを表します。 「〜するには時期尚早である」「時期尚早な◯◯」という形で用います。 目上の人に対して、「時期尚早ではありますが」「時期尚早ではございますが」などと使うこともできます。
例文
浅はかな (意味:思慮の足りないさま) 「なんと浅はかな考えだろう」 詰めが甘い (意味:物事の最終段階での緻密さを欠いているさま。最後の最後でへまをする様子) 「最後にミスをしてしまうなんて、君は本当に詰めが甘いね」 短絡的 (意味:物事の本質や筋道を深く考えずに、原因と結果などを性急に結びつけてしまうさま) 「短絡的な考え方を今一度改める」 腰が軽い (意味:物事を注意深く考えず、行動すること) 「彼は腰が軽いから、もう少し考えて行動した方が良い」
「巧遅」の意味は「巧みではあるが仕上げの遅いこと」です。 出来栄えは優れているが、仕上がりまでの時間がかかることを表します。 「巧」は音読みだと「コウ」、訓読みだと「たくみ・うまい」と読みます。 「巧」は「てわざがうまい・たくみ」を意味します。 「遅」は音読みだと「チ」、訓読みだと「おくれる・おそい」と読みます。 「遅」は「進み具合がぐずぐずしている・予定の時間を過ぎてしまう」を意味します。
例文
この2つの表現を合体させたのが「巧遅拙速」という四字熟語です。 「巧遅拙速」は「できが良くても遅いのはできがまずくても速いのに及ばない」「物事はすばやく決行すべきであるということ」を意味します。 時間をかけて良いものを作るよりかは、多少出来栄えが悪くても迅速であるほうが良いことを表します。
例文
「拙速は巧遅に勝る」は「せっそくはこうちにまさる」と読みます。 「拙速は巧遅に勝る」は、兵法書「孫子」の格言です。 「拙速は巧遅に勝る」は「仕事は完璧でなくとも早い方がよい」を意味します。
「巧遅は拙速に如かず」は「こうちはせっそくにしかず」と読みます。 「巧遅は拙速に如かず」も「拙速は巧遅に勝る」、四字熟語「巧遅拙速」と同じで、「仕事は完璧でなくとも早い方がよい」という意味です。
「兵は拙速を尊ぶ」は「へいはせっそくをたっとぶ」と読みます。 「兵は拙速を尊ぶ」も同じ意味で「仕事は完璧でなくとも早い方がよい」です。
はすべて同じ意味で、アドバイスや嫌味として使います。
日本語の「拙速」はネガティブな意味で使われることが多く、「急ぐ」というニュアンスに重きが置かれているので、「hasty」という形容詞がぴったりかと思います。
などの言い回しで使います。 例文です。
Don’t make a hasty decision.
拙速な判断は避けよ。
I think I was a little hasty in judging her.
私は彼女に対して少し拙速な判断をしたと思う。
Facebook社では「Done is better than perfect.(完璧を目指すよりまず終わらせろ)」という行動指針を掲げていた時期があります。 変化の激しいテクノロジー産業においては考えることや完璧を目指すことよりも行動してプロダクトを世に出すことが重要だ、ということを言っています。 「Done is better than perfect.」は「拙速は巧遅に勝る」の英訳にピッタリですね。
「拙速」について理解できたでしょうか? ✔︎「拙速」は<せっそく>と読む ✔︎「拙速」は「出来は悪いが仕上がりが早いこと」を意味 ✔︎「拙速」の類語には、「性急」「短兵急」「早計」などがある ✔︎「拙速」の反対語「巧遅」は、「巧みではあるが仕上げの遅いこと」を意味する